Close

2020年1月2日

藤田理代『上佐曽利帖』

和紙の風合いが優しい。それは西谷、上佐曽利のダリアの上を吹いてくる風。
依頼に応じて現地を訪れ、取材を重ねて、一冊の美しい豆本に思い出を綴じる『掌(てのひら)の記憶』。藤田さんが今回、依頼を受けて訪れたのは、宝塚、西谷最北部に位置するダリアの里、上佐曽利。これは、マチオモイ帖として、『掌の記憶』と同時に制作された和綴じのZINE『上佐曽利帖』。内容はもちろん、綴じ方や紙の選択にもZINE作家の技をご覧ください。
〈本文の一節〉

ダリアと巡る春夏秋冬。
4月に入り、“親いも”と呼ばれるようになる球根を畑に植えるところから始まるダリア生産。夏と秋の開花を経て親いものまわりにできた新しい球根が育ちます。
11月末からはその球根の「掘り起こし」。地区のみんなでそれぞれの畑をまわりなら、一つずつ手作業で掘り起こす共同作業です。年明けからは掘り起こした球根を洗い、芽のある球根のみを選り分け、ラベルをつけて出荷。現在では年間で約 80万球、昭和の全盛期 300万球からは減ったものの、今でも国内生産の約4分の1を占めています。
“作業場”と呼ばれる園芸組合の建物には、昔から使われている球根を洗う機械や木製の蒸籠、ラベルや当時の資料など古いものがたくさん眠っています。…

上佐曽利帖

著者:藤田理代
制作年:2016年
仕様:B6横変形判 24ページ 和綴じ
著者プロフィール:ZINE作家。29歳で絨毛がんを経験し、患者や家族の「大切な記憶」を交わすための手製本の制作・展示活動をはじめる。病院や地域で本づくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」をひらきながら、患者や家族、医療者が想いや記憶を交わすきっかけづくりを続けている。(2020年8月)