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2020年1月2日

いまのたたみ『私史公景 たからづかマチの景色ヒトの記憶』

父から息子へまたその子どもたちへ。暖かい鼓動が伝わる町の移り変り。
見開きの左頁に写真、右頁に短い文章、市内21か所をテーマにした21のエピソード。写真も文章も詩心あふれる作品。表紙の夕日(?)に染まる雲景を背景に立つ鉄塔の写真を見ているだけで、懐かしく、切ない気持ちになります。書名「私史公景」の由来は、私有地であってもその土地の景観は公のものであるという考え方「私地公景」からの発想とのことです。
〈本文の一節〉

星が見えますか

天体望遠鏡が欲しいとあなたに強請ったこともありましたよね。
76年に一度巡ってくる彗星が回帰した年、このまちに天体望遠鏡が完成しました。
ロボットの頭のように見えるこのまち御自慢の天文台を、子ども達は親しみを込めて呼びました「ハレーロボ」と。
僕は、夢中になってこの天体望遠鏡を操りました。
子ども達と交代で、ちいさな接眼レンズを何度も、何度も覗き込みました。
接眼レンズのむこうは深宇宙でした。
1986年の残像。

私史公景 たからづかマチの景色ヒトの記憶

著者:いまのたたみ
制作年:2017年
仕様:A5判 56ページ 平綴じ
著者プロフィール:鉄道を使う一人旅のブログなどもされていますが、やはり詩情あふれる内容になっています。せっかくペンネームにしたのに奥付にしっかりお名前を書いているのは、真面目なお人柄のせいでしょうか。(2020年8月)